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浸す工程にも技がある 2021.11
混ざりあい、
染まる藍
工房の木樽でとろりとたゆたうのが、発酵技術を用いて藍の色素を還元させた染色液。そこに布地を浸し、絞り、空気中で広げながら酸素と反応させると、黄土色だった布地は息つく間もなく藍色に変化します。この藍染の仕組みは、六千年以上前から世界各地で独自に生まれ、それぞれ受け継がれてきました。雨が降り、大地が肥えるように。種が運ばれ、植物が育つように。発酵菌は藍を息づかせ、藍染は人を強くした。自然のものだけで生みだされるWatanabe’sの藍染。それは酸素をもつただひとつの青い惑星、地球の、あらゆる営みの美しい交点なのです。
混ざりあい、
染まる藍
ふたつとない、
二度目の発酵
藍は、乾燥葉から蒅(すくも)になるために一度目の発酵をします。その蒅を熟成させた後に、灰汁と貝灰と小麦麩を加え、二度目の発酵をさせると染色液ができます。染色液をつくることを専門用語で「藍を建てる」といいますが、Watanabe’sのそれは「天然灰汁発酵建て」という伝統的な方法です。自然の反応を用いながら葉藍の個性を最大限に引き出す「天然灰汁発酵建て」は、原料の調合バランスや、仕込み時期の気温や湿度を考慮した温度管理、反応速度の見極めなど勘と経験に基づく瞬間的な判断の積み重ねが欠かせず、同じ発酵はひとつとしてありません。

水を得た蒅 2021.11

美しく染まる糸 2021.11

美しさの先で
強さを物語る色
数えきれないほど多いことを意味する四十八を用いた「藍四十八色」という言葉があるように、実は藍色の色幅は非常に広く、白に近い「藍白」から黒に近い「留紺」まであります。そのすべての「藍色」を表現するため、工房では常時、濃度が異なる複数の染色液を用意しています。どんな生地をどの液につけ、何度染め重ねるか。指先の感覚を頼りにあらゆる「藍色」に染めあげます。一般に藍染をすると着古した布地の強度さえ高まるといわれますが、それ以上に、美しきその色が、藍の想いの強さを物語ります。
最期は土に還る、
そして
出来たては多くの色素を含み、発酵菌が活発に息づいている染色液。しかし、染色を重ねるうちにその数は減っていきます。すると、濃くは染まらなくなってくる。そうなった染色液はある日はたらきを終え、土に還ります。そしてまたはじまりの場所で、いのちの循環のなかで新しい藍となり、新しい色を放つのです。

土へ還る染色液 2021.11